不妊治療中に知っていたらよかった特別養子縁組のこと

不妊治療 特別養子縁組 不妊治療と特別養子縁組

特別養子縁組で児童相談所から迎えた子どもと暮らす養親の瑛子えびすこと申します。

特別養子縁組を選択する方の多くは、不妊治療経験者です。
私も不妊治療を経験してから、特別養子縁組の道に進みました。

特別養子縁組にも年齢制限があります。
民間団体から子どもを迎えるには数十万から数百万のお金がかかります。

この事実を知らないで、不妊治療を年齢的にも経済的にも限界ぎりぎりまで行ってしまうと特別養子縁組に進むことが難しくなることがあります。

次のような意識調査があります。

「不妊治療中に知っていたらよかったこと」

①申し込み窓口
②子どもとのふれあいの経験
③養子縁組制度の具体的知識や条件
④養親を求める子どもの存在
⑤養子を育てる条件
⑥養親子の実際の姿

家庭養護促進協会著・発行 1998 『養親希望者に対する意識調査』より

不妊治療をしている人に知ってほしい特別養子縁組のことを①~⑥にわけてお伝えします。

 

特別養子縁組の申し込み窓口

特別養子縁組の申し込み窓口はお住まいの地域を管轄する児童相談所です。

他にも養子縁組をあっせんしている民間団体(民間機関)がありますが、まずは行政機関である児童相談所に相談してみることをおすすめします。

児童相談所は児童福祉法に基づいて都道府県に設置されている子どもに関する相談援助機関です。
児童相談所と聞くと、近年の報道で虐待対応にあたるところのイメージが強いですが、里子里親の支援も業務に含まれます。
都道府県内に数カ所設置されていたり、政令指定都市や特別行政区であれば市や区ごとに設置されていたりします。

まずは「特別養子縁組について相談したい」と児童相談所に電話で問い合わせから

児童相談所へのアプローチ方法はこちらに詳しく書いています。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/11/03/soudansaki-madoguti/

 

子どもとのふれあいの経験

子育ての不安は誰もがもつと思いますが、実際に子どもと触れ合った経験がないと特にその不安は強くなると思います。

特に不妊治療をしていると、子どもの姿を目にすることがつらいと感じてしまい、子どもがいる場所を避けてしまう傾向があると思います。
休日の公園、ショッピングモール、私もそうでした。

それまで避けていた対象に近づくわけですから、少しずつ心や体を慣らしていく必要がありますよね。
まずは子どものいる親せきや友人の家庭に遊びに行くことから始めてみたらいかがでしょうか。

子どもに慣れてきたなと思ったら、少しずつ対象を広げていく。

周りの養親さんたちのなかには、乳児院や児童養護施設にボランティアに行っていた方もいます。

私の知人は「抱っこボランティア」という、乳児院の赤ちゃんを抱っこするボランティアに行っていましたよ。

 

特別養子縁組の具体的知識や条件

特別養子縁組の基礎、基本的な用語はこちらにまとめています。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/11/05/kihonnyougo/

 

特別養子縁組とは、生みの親との関係がなくなり、育て親(養親=ようしん)がに親になる制度です。
普通養子縁組で養親と養子が同意し届けを出せば成立しますが、特別養子縁組では、家庭裁判所の審判によって成立します。

特別養子縁組は「子どもの福祉」のための制度であり、子どもがほしい親のための制度ではありません。

特別養子縁組には6か月以上の試験養育期間(監護期間ともいう)が必要です。
お試し期間のようなものです。

特別養子縁組が成立すると、戸籍には嫡出子と同様に「長男」「長女」と記載されますが、身分事項の欄に「民法817条の2による裁判確定日」と書かれるので、特別養子縁組されたことはわかります。

特別養子縁組では養親からの離縁はできません。

全国で年間およそ600組程度の縁組が成立しています。

子どもを迎えるのは児童相談所からと民間あっせん団体からとがあります。

児童相談所から子どもを迎えるためには、里親制度の養子縁組里親になる(都道府県に里親登録をする必要があります。
養子縁組里親になるには半年から1年程度かかることが多いです。
面談・研修・乳児院や児童養護施設での実習、家庭訪問などを受けます。

養子縁組のあっせんはを行っている民間団体は、予期せぬ妊娠に悩む女性を支援し、子どもの命を守る活動をしている機関です。
母体はNPO法人・社団法人などです。

児童相談所から迎える場合、費用はかかりません
手続き等に関する費用は全て税金で賄われます。
子どもが入籍するまでの期間は都道府県から月5万円程度の生活費が支給されます。

民間団体から迎える場合は費用がかかります。(費用については後述)

民間団体から迎える場合は新生児であることが多いですが、児童相談所からの新生児委託は超レアです。

児童相談所によって特別養子縁組前提での委託率は大きく異なります。
約3分の1の児童相談所が特別養子縁組前提の委託を行っていません。
児童相談所で民間団体への登録を勧められることが普通にあります。

児童相談所、民間団体の方針によって、共働きでも特別養子縁組できる場合もあります。

 

養親を求める子どもの存在

養子側の要件

特別養子縁組の対象となる子どもの年齢が6歳以下でしたが、改正民法により、15歳以下まで引き上げられました。

子どもの生みの親の同意が必要です。ただし、生みの親が行方不明でが意思を確認できない場合、虐待、悪意をもって遺棄するなど、子どもの利益を著しく害する場合は、父母の同意がなくても、裁判官の判断で成立させることができます。

生みの親による養育が著しく困難または不適当という事情が必要です。

養子の背景

特別養子縁組の対象になる子どもの背景=養子に出す実親の背景はさまざまです。

妊娠の経過や養子にして託そうとする事由や背景は、実にさまざまである。
具体的には、若年での妊娠(小学生・中学生・高校生・大学生など)、男性の身勝手や無責任(妊娠が分かった後連絡が途絶える。否定。中絶を強要。実際は、妻子がいた等々)、性被害など事件性のある妊娠、出会い系サイトや風俗の仕事による性交での妊娠(相手が不明)、性虐待、不倫、貧困等経済的な問題、多子、知的障害、精神疾患、婚姻外の妊娠等で世間体が悪い、費用がなく中絶可能時期を過ぎてしまった、特別養子縁組として託すことを経験しながらこれを繰り返す人、胎児異常や新生児の奇形を受け止められない、医師から障害をもつリスクがあるという説明を受けて悲観した等々と多岐にわたっている。

子どものための里親委託・養子縁組の支援
P198

背景に虐待やレイプなどの犯罪行為があり養子に出される子どももいますが、実親にとって不運としか言えないような理由であることも多いと聞きます。

子どもを受け入れる側は子どもを選んだり、理由を選んだりすることは基本的に難しいです。(子どもの事情を知って辞退される里親もいるにはいますが…)

現在、血のつながった親と暮らせない子どもは全国に4万人以上います。
これほどたくさんの子どもたちが施設で暮らしているのに、特別養子縁組を希望する養親が里親登録をして何年も待っても委託の話がないのはなぜか。

実親が親権を手放さないことが理由の一つです。

実親のなかには、自分では育てられないけど、子どもを人手に渡してしまうのは嫌と考える人がいます。
また、里子や養子に出す選択肢があることを実親に提案してしきれていない児童相談所もあるのではないかと、児童相談所による里親委託率の差を知ると考えてしまいます。

 

養子を育てる条件

特別養子縁組で子どもを迎えるには法律婚をしている夫婦である必要があります。
夫婦別姓を実行している方、期間が長くても内縁関係・事実婚の夫婦は婚姻届を出す必要があります。
また、夫婦の年齢が25歳以上(一方が25歳以上、もう一方が20歳以上であれば可)でなければなりません。

児童相談所から迎える場合

養子縁組里親として認定されるための条件には次の4つがあります。その他、自治体によって、里親研修を修了することが条件となります。
・要保護児童の養育についても理解および熱意並びに児童に対する豊かな愛情を有していること
・経済的に困窮していないこと
・里親本人、またはその同居人が欠格事由に該当していないこと
・養子縁組によって養親となることを希望する者であること

子どものいない夫婦のための養子縁組ガイド P75より

誰もが当てはまりそうなざっくりとした条件ですよね。
この他に年齢、健康状態、居室数などの規定があります。
子どもに個室が与えられることが求めらる場合があります。
収入については、非課税世帯でなければよいくらいで、特別、裕福である必要はないようです。

欠格事由とは次のようなものです。

欠格事由には次のようなものがあります。
・成年被後見人、または被補佐人(同居人にあっては除く)
・禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなるまでの者
・児童福祉法、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律、その他、国民の福祉に関する法律で政令で定められるものの規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなるまでの者
・児童虐待の防止等に関する法律第二条に規定する児童虐待、または被措置児童等虐待を行った者、その他、児童の福祉に関し著しく不適切な行為をした者

子どものいない夫婦のための養子縁組ガイド P75.76より

里親認定の申請をするときに、欠格事由に該当しませんという同意書にサインを求められました。

 

年齢制限(迎える親側は何歳まで可能か)は、児童相談所によって考え方が異なります。

養親・養子の年齢差が45歳程度までとしているところが多いです。
民間団体からは新生児の委託が中心ですが、児童相談所の場合は迎える子どもの年齢に幅があるので、年齢差が45歳だとすれば、親50歳・子5歳というような組み合わせが可能です。

 

民間団体から迎える場合

養親希望者に求める条件どの機関でもほぼ共通していると思われる事項は次の5点です。
・生母の意志を尊重することを求めています。一旦は養親に子どもを託そうと考えたけれども、手元で育てる決心をする生母もいます
・自分の生活を子どもに合せられる柔軟性が必要です
・子どもの性別や健康状態に関する注文を認めていません。生まれてきた子どもをそのまま受け入れることが条件になります
・経済的に安定していることが必要です
・子どもの知る権利を尊重し、真実告知することを求めています。

この他に、年齢制限、費用、里親登録の有無、提出書類、不妊治療継続の可否、夫婦のどちらかが子育てに専念すべきかなどは民間団体の方針によって異なります。

ここで最も注意すべきなのは「年齢制限」「費用」です。
年齢制限については法的には無くなりましたが、民間団体が独自に設定しています。
以前は親子の年齢差が40歳までとする団体が多かったようですが、現在は養親望者の高齢化が進み、年齢は45歳程度までとしている団体が多いです。

児童相談所から迎える場合や民間団体でも里親登録を必要とする場合には、里親登録できるまでに半年から1年程度(私たちは諸事情により1年半かかりました)かかることを計算して手続きを進める必要があります。

また、ほとんどの場合、登録できてから委託までの待機期間があります。
制限した年齢になると、子どもが委託されていなくても登録が解除される団体もありますので、早めに準備しておかなければなりません。

民間団体から子どもを迎える場合、費用がかかります。
金額は実費の数十万円という団体から、手数料を含めて200万円以上かかる団体まであります。

民間団体ごとの費用比較はこちら。

特別養子縁組あっせん民間団体の費用の比較 平均値は?
厚生労働省が公開したデータから、特別養子縁組あっせん機関ごとの費用比較をしました。

 

 

養親子の実際の姿

最近はブログやtwitterなどで養親さんが養子の子育ての様子を書かれているのをよく見かけます。

私は特別養子縁組を考え始めた数年前はアメブロで書いていました。
現在はtwitter(https://twitter.com/eebisuko)を使っていますが、個人情報の問題があり、子どもについてはフェイクをまじえて書いています。

アメブロ等で顔出しをしてブログを書いている養親さんは民間あっせん団体の一つである「babyぽけっと」から迎えている方が多いようです。
ブログを通じて、実親さんに子どもの成長を報告する目的もあると聞きました。

子どもを迎えてみて感じるのは、基本的には目の前にいる子どもの子育ては実子と同じではないかなということです。
もちろん、里親特有の悩みはあります。実親さんの気持ちが変わらずに養子縁組が成立するだろうかと不安になったり、ママ友との会話で妊娠・出産の話題が出たときどうしようとドキドキしたりなど。
でも、それを常に悩んでいるというより、頭の片隅に残っていて、ときどき顔を出す程度です。
子育てに懸命になるほどに里親特有の悩みが薄くなっていく気がします。

養親さんのtwitterやブログで、養親子の実際の姿を見てみて下さい。

また、里親啓発イベントやシンポジウム等が全国で開催されています。
特に10~11月は里親月間なので各地で里親関連イベントが多いです。

実際に養親や養子が参加していることもあるのでリアルな様子を見ることができます。
でもきっと誰かに言ってもらわないと、普通の親子すぎて、養親子であることに気づかないと思いますけどね。

 

まとめ

不妊治療が成功して子どもを授かれることが一番喜ばしいことですが、全員がその結末を迎えられるわけではありません。
子どもを産まなくても育てることができる選択肢があることを心に留めておいていただけると、不妊治療の出口が少し明るくなることもあるかもしれません。
知らないから不安という状況が少しでも打破できたらうれしく思います。

合せてこちらもどうぞ。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/10/17/nannsaimade/

 

参考図書

「産まなくても、育てられます」後藤絵里 著 オススメです!!

「子どものいない夫婦のための養子縁組ガイド」吉田奈穂子 著

「子どものための里親委託・養子縁組の支援」宮島清/林浩康/米沢普子 編

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コメント

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