なぜ民間団体から子どもを迎える費用は高額なのか

特別養子縁組のお金

特別養子縁組で迎えた子どもと暮らしています。瑛子えびすこと申します。

3年程前に特別養子縁組を考え始めた頃に書いたブログ。
特別養子縁組で子どもを迎えるのに費用がかかることに抵抗感があることを書いています。

『養親が負う経済的リスクは妥当なのか?』
妊娠中の友人との話の続き。友人は私と同職。産休、育休をとって仕事を続けるつもりだという。何年も昇給がない夫1人の収入では心もとないからという。養子の場合は育休…

 

友人らに「民間団体から子どもを迎えるのに数百万のお金が必要」と話すと驚かれることが多いです。
私たち夫婦も当初は高額な費用をなぜ養親候補が負担しないといけないのか疑問でした。

なぜ民間団体の費用がこれほど高額なのか、その理由を考えます。

 

養子に出すにはお金はかからない

前提として、養子に出す実母さん側は費用がかかりません。

費用を負担するのは「養子を迎える」養親側です。

実母さん側は「お金がもらえる」と言っては語弊があるかもしれませんが、特別養子縁組をあっせんする民間団体が住む場所を提供してくれたり、出産費用・生活費を支援してくれたりする場合があります。

例えば、babyぽけっとは生みの親専用の保護シェルターを全国に3カ所もっていて、実母さんは費用負担なしで出産まで暮すことができます。

NPO法人 Babyぽけっと - 思いがけない妊娠・出産・子育てのお悩みを養子縁組・特別養子縁組で救済 -
あなたのおなかに宿った小さな命、もし産むことを選択できず悩んでいるのならご相談ください。予期せぬ妊娠や望まない妊娠でお悩みの方や産んでも育てられない方、また養子縁組を検討されている方の相談・支援をいたします。

 

民間あっせん団体の運営のしくみ

民間団体はSOSを出した妊婦さんを支援しています。
特定妊婦と言われるような、経済的に困窮していたり、仕事や住むところがなかったり、助けてくれる人がいなかったりする妊婦さんたちです。
全国の妊婦さんのところへ向かい、住まいを用意し、役所にかけあって保険証や母子手帳を発行する手続きを手伝い、病院受診に付きそう…などあらゆる支援をします。

民間団体に国から支払われる補助金は年間数十万円だそうです。

=スタッフひとりの年収さえ捻出できない額。

あっせん法が改正されたときに、あっせん団体の基準がきびしくなり、「これでようやく国からの補助金が十分に出るはず」と考えた関係者が多かったようですが、実際には基準を満たすための書類仕事が増えただけで、補助金はごく少額だったと聞きました。

支援にあたる人の人件費を含めた団体の運営費を誰が負担するか。
当然、妊婦さん自身が払うことは難しいですし、年間数十万円では団体にも難しい。
となると、子どもを迎えたい養親候補に支払うってもらうしかないという流れなのだと思います。

個別のケースにかかった費用ではなく、一律の手数料を求める団体もあります。

団体への手数料は自分のところに来た子どもにかかった費用を支払うというより、団体が支援する複数の妊婦さんや子どもを救う費用になるイメージなのかもしれません。

 

手数料は無料、実費のみの団体がある

民間団体のなかにも、手数料が必要ない団体があります。

例えば、家庭養護促進協会から子どもを迎える場合、手数料はかかりません。
(施設実習に必要な宿泊費や交通費などの実費は必要です)
なぜ、手数料が不要かと考えると、家庭養護促進協会は大阪府や大阪市等から里親関連事業を委託されているため委託金が出ており、寄附も多いからなのではないかと思います。

https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/05/14/anatano-ainote/

 

あんさん協(あんしん母と子の産婦人科連絡協議会)では、手数料はなし、家庭訪問の交通費や教育入院費など実費のみとなります。
あんさん協の場合は特別養子縁組支援にかかる人件費を団体を運営している産婦人科が負担しているためではないかと思います。
養親と団体をつないでくれるコーディネーターさん、養親の面接や指導を行う助産師さんは産科の職員さんです。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/05/21/annsannkyou/

 

これらの団体のように、他の事業を担って別の収入があったり、団体スタッフが他の業務を兼任していたりするような場合は、団体の運営費を養親が負担する必要がないため、費用が安くなるのだと考えます。

 

「赤ちゃん縁組」で虐待死をなくす より

「赤ちゃん縁組」で虐待死をなくす 本文70~71ページより引用

民間団体の方は、妊娠した女性を地元から離れたシェルターでケアをして、相談やカウンセリングを重ねながら、出産のサポートまでをしてから縁組をする、という活動をなさっています。こうした民間団体の活動は、1回あたりいくらと定められません。産みの親となる女性の多くは、経済的にも苦しい事情を抱えており、健康保険に入っていない人もいます。彼女たちから実費をいただくことは不可能です。

日本では特別養子縁組のあっせんに必要な費用について、国からのサポートなどは一切ありません。これも日本で特別養子縁組が広まらない要因の一つです。
一方、アメリカやイギリスでは、養子縁組に関わるコストを養親が支払う必要はほとんどなく、国からの補助でまかなわれているということが、2013年に日本財団で開催された「特別養子縁組を考えるシンポジウム」において発表されていました。イギリスでは「養子縁組に関わる費用を養親が負担することは一切ない」ですし、韓国でも、一定の補助金が支給されているといいます。

また、特にアメリカやイギリスでは、養子縁組をした家族に対して、アフターケアとして金銭面を含めたさまざまなサポート体制があるということです。国が金銭面も含めて養子縁組を支援しているということが、日本との大きな違いなのです。

特別養子縁組の取り組みが遅れていると言わざるを得ない日本において、民間あっせん団体の活動経費は、縁組が成立した養育家庭から「実費」という形でいただく他はないのです。

他国と比較しても、日本の養子縁組支援は大幅に不足しているようですね。

 

民間団体から子どもを受託した場合の補助金

民間団体から迎えた場合に補助金が出る 「養子縁組民間あっせん機関助成事業」
民間あっせん機関から子どもを迎えた方が助成金を受けられる可能性があります。

民間団体から子どものあっせんを受けた場合に補助金が出る、都道府県があるようです。
該当される場合は要確認です。

 

本来は行政が負担すべき費用を養親が肩代わりしている

特定妊婦の支援は本来、国が(行政が)行うべき業務だと思います。
それを代わって民間団体が行っているのに、国がお金を出さないのは絶対におかしいです。

結果的に国が出すべきお金を養親が代わって負担しているのが現状。

特別養子縁組にかかる実費負担を養親候補が行うのは当然ですが、民間団体の運営費まで負担しなければいけないことにはやはり疑問が残ります。

当事者として特別養子縁組制度への要望はいくつかありますが、この点は改善すべきポイントだと思っています。

 

厚生労働省からのデータをもとに民間あっせん機関(団体)の費用を比較しています。

特別養子縁組あっせん民間団体の費用の比較 平均値は?
厚生労働省が公開したデータから、特別養子縁組あっせん機関ごとの費用比較をしました。

 

児童相談所と民間の費用の比較はこちら。

特別養子縁組にかかるお金 児童相談所と民間団体の費用比較
特別養子縁組で子どもを迎える費用、児童相談所からと民間あっせん団体からを比較します。費用面だけを見れば圧倒的に児童相談所からの方が負担は少ないです。

コメント

  1. […] 民間団体の費用が高額な理由、民間団体によって費用に差がある理由を書いています。 https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/05/31/minnkann-kougakuhiyou/ […]

  2. […] 費用が高額な理由、団体によって差がある理由をこちらに書いています。 https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/05/31/minnkann-kougakuhiyou/ […]

  3. […] なぜ民間団体から子どもを迎える費用は高額なのか? https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/05/31/minnkann-kougakuhiyou/ […]

  4. […] 民間団体からの特別養子縁組の費用が高額な理由。 https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/05/31/minnkann-kougakuhiyou/ […]

  5. […] なぜ民間団体から子どもを迎える費用は高額なのか | 糸ちゃんのまつげ  より: 2020-09-02 09:01 […]

  6. […] なぜ、民間団体の費用が高額なのかはこちらを参照ください。 https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/05/31/minnkann-kougakuhiyou/ […]

  7. […] […]