
特別養子縁組で迎えた子どもと暮らす養親の瑛子えびすこと申します。
特別養子縁組の制度を調べ始めたとき、特別養子縁組は生みの親との関係を断絶させて、育ての親の戸籍に入る仕組みだと知り、そこまでしないといけないの?と思いました。
普通養子縁組であれば、生みの親・育ての親の両方とつながっていられるのに、どうして特別養子縁組が選択されるのだろうと不思議でした。
制度の違いや、養子の対象になる子どもの背景などを知っていくうちに、やっぱり特別養子縁組がいいと思うようになりました。
普通養子縁組ではなく、特別養子縁組がいいと考える理由をまとめてみます。
特別養子縁組と普通養子縁組の法律上の違い
普通養子縁組と特別養子縁組では、要件とされる同意権者の同意の意味が異なっている。
これは、普通養子縁組と特別養子縁組では、その法的性質が異なるからである。
すなわち、普通養子縁組が、養親となる者と養子となる者との契約であるのに対して、特別養子縁組は、家庭裁判所が成立させる国家宣言型の養子縁組だからである。
子どものための里親委託・養子縁組の支援 P229より
端的にいえば、普通養子縁組は、養親となる者と養子となる者が「縁組しましょう」と契約すれば成立。
対して、特別養子縁組は、家庭裁判所が成立させる。
ただし、未成年が普通養子縁組をする場合には、家庭裁判所の申立てをして許可を得ることが必要です。
普通養子縁組と比較した場合の特別養子縁組のメリット・デメリット
唯一の親と終身的な関係が結べる
いちばんのメリットは、唯一の親との一生涯の関係ができるということだと思います。
幼少期に、安心して過ごせる、一対一の関係で育まれることは人格形成において、とても重要。
普通養子縁組の場合、親が二組いることになるので、子どもの気持ちや立場が複雑です。
しかし、養親とどうしてもうまくいかない場合に生みの親との生活を選ぶ可能性が残されているなど、複数の親がいることでのメリットはあります。
生みの親との法的関係(相続・扶養の義務)が無くなる
特別養子縁組の場合、生みの親との戸籍上の関係が無くなります。
法的関係が無くなるということは、相続権や扶養の義務が無くなるということ。
相続権が無くなることは、デメリットのように感じますが、相続はプラスのものばかりとは限りません。借金などマイナスのものである可能性もあります。
相続権が無くなることは、デメリットにもメリットにもなり得ます。
扶養の義務でいえば、普通養子縁組の場合、二組の親を子どもが経済的援助しなくてはならない可能性が出てきます。
最近は、必須ではなくなっているようですが、生活保護申請時の家族への扶養照会などは法的な関係が残っていれば、子どもの元へ来ることになると思われます。
よほどの理由がない限り、離縁できない
いったん成立した特別養子縁組は解消(離縁)することはよほどの理由がない限りできません。
よほどの理由に該当するのが
育て親による虐待や悪意の遺棄、その他子どもの利益を著しく害する事由があり、かつ、②実父母がその子を監護できる場合
においてのみ認められています。
実父母が養育できないとされて、養子になっているわけですから、この事態が覆るのはごくごくまれなケースであると思われます。
育て親から離縁を申立てすることはできません。
離縁を申立てできるのは、養子本人か実父母、虐待などの事案が刑事事件になった場合に検察官、の3者。
一方、普通養子縁組の場合、
- 当事者の一方から悪意の遺棄をされたとき
- 当事者の一方の生死が3年以上明らかでないとき
- 縁組を継続しがたい重大な理由があるとき
いずれの場合でも、離縁を申立てできるのは、子ども、育て親、子どもの代理人(通常は親権者)の3者。
また、協議による離縁も認められています。
特別養子縁組は終身的な親子関係を作るために定められているので、基本的には離縁できない制度。
ある民間団体の面談で「たとえ子どもが犯罪を犯しても特別養子縁組は離縁できません」と言われたことを覚えています。
養親(育て親)から、離縁できないという意味ではデメリットといえるのかもしれません。
子どもの意思は反映されないなのに子どものためと言える?
数年前のことです。
特別養子縁組制度について調べるほど、矛盾を感じるようになりました。
子どものための制度と言いながら、子どもの意思は全く反映されないんだなあ。

リンクの特別養子縁組を考え始めたころに書いたブログから夫のことばです。
特別養子縁組が本当に子どものためと言えるのかわからなくなってきた。
子どものためといいつつ、親権がほしい。自分のものにしたいという。それは親の都合だ。子どもが判断できる年齢になったら自分で戸籍をどうするか選べるようにしたい。選択肢を残しておきたい。里親ではダメなのか?
この頃、夫と何度も話し合いました。
養育里親として子どもを育てて、子どもが意思を表明できる年齢になってから(例えば成人してから)養子縁組するかどうか、子どもに決めさせるのではダメなの?
このときは普通養子縁組とではなく、養育里親と比べて迷っていました。
養育里親も普通養子縁組も、生みの親との関係を残しつつ、育ての親が養育するという意味では同じです。
その考えをあらためる2つのきっかけがありました。
大人でも負担が大きい決断を子どもにさせていいのか?
児童相談所での面談のときのことです。

養子縁組より養育里親の方が子どもにとっていいのでは思うようになりました。その方が子どもに戸籍をどうするかなどの選択権が残りますから。

真剣に考えてくださったんですね、お考えはわかります。
瑛子さんたちは子どもと養子縁組をするかどうかの判断に負担を感じているんですよね?

はい、万が一、いずれ子どもにどうして勝手に特別養子縁組したんだと言われたりしないだろうかと不安です。

はい、少し考えてみて下さい。
大人も難しいと感じる大事な決断を子どもにさせることが果たしていいのでしょうか?子どもにとってはさらに大変な負担ですよ。

たしかにそうですね。私たちの負担を子どもに持ち越すことになりかねませんね。

はい。条件が整って可能であれば、子どもにとっては永久的な居場所が持てる特別養子縁組がいちばんいいと私は思います。
担当さんはこんな経験も話してくださいました。
担当したケースで長期間、養育里親のもとで育ったお子さんがいました。
里親は「養子縁組したいならいつでもしてもいい」と日頃から里子に言っていたそうです。
里子は本心では養子縁組したいけど自分ではなかなか言い出せずにとても悩んでいたと。
里子にとっては悩ましい状況ですね。
親が一生の責任を持って決断することが最適解なのかなと思いました。
存在が負担になるだけの親
私の知人に3歳から18歳まで児童養護施設で育った方がいます。
その方に特別養子縁組について相談したことがあります。
知人は2歳から両親とは全くの音信不通だったのですが、数十年後のある日、お父さんが亡くなったと警察から連絡がありました。
警察が遺体の引取りを依頼してきました。
遺産相続の手続きもしてくださいと言われたとのこと。
知人は遺体の引取りを拒み、遺産を放棄の手続きをしました。
プラスであってもマイナスであっても相続する気はないと即決したそうです。
すでにお母さんも亡くなっていたことを知人はそのとき知ったそうです。
両親が亡くなって心がすっきりしたと言われていました。
想像できないかもしれないけど存在が負担になるだけの親もいるんだよと話してくれました。
知人は施設入所中、週末里親さんにお世話になっていたそうで、その里親さんを本当の親だと思っているとも言われました。
知人は特別養子縁組で子どもを迎えることを大賛成して、背中を押してくれました。
さまざまな背景があるからこそ養子の対象になる子どもです。
生みの親(実親)との関係が残っていることが子どもの足かせになってしまうケースがあるのかもしれません。
これらの経験を通して、私たちは次第に子どもにとっても特別養子縁組がいちばんいいのだなと思うようになりました。
特別養子縁組は子どもの選択肢を奪ってしまうことに気づき、それぞれが考えて考えて、2人で深く話し合うことができた点はよかったと思っています。
まとめ
私たち夫婦なりの特別養子縁組を選択した過程を紹介しました。
普通養子縁組と特別養子縁組を比べたとき、特別養子縁組のデメリットはありますが、それを大幅に上回るメリットがあると考えます。

子どもの唯一の親になることを選んだ責任を養親は生涯、背負っていかなければなりませんね。
参考図書