特別養子縁組とは 経験者目線でわかりやすく伝えます

特別養子縁組の基礎知識

特別養子縁組で迎えた子どもを育てる養親の瑛子えびすこと申します

私が特別養子縁組について調べ始めたのは4〜5年前。

この間に民法が改正されるなど特別養子縁組制度は変わりつつあります。

特別養子縁組で子どもを迎えた経験者目線で「特別養子縁組とはなにか」できるだけわかりやすくまとめます。

 

特別養子縁組制度のはじまり

特別養子縁組制度に影響を与えたと言われるのが産科医の菊田昇氏。

菊田医師が人工中絶での赤ちゃんの死に心を痛め、中絶しようとする女性を説得し、女性が産んだ赤ちゃんを子どもがほしい夫婦へ仲介しました。

そのときに養親を募集するために出した新聞広告が

「赤ちゃんを我が子として育てる方を求む」

菊田昇医師の生涯が小説になっています。

 

特別養子縁組の年間成立件数

特別養子縁組は1987年に創設、司法統計によると全国の年間成立件数は以下の通り。

平成29年 616件

平成30年 624件

令和元年 711件

増えてきてはいますが、親と暮らせない社会的養護下にある子どもの人数が4万人以上と考えると、ごく少数であるように感じます。

 

特別養子縁組には申立てが必要

特別養子縁組制度は、実親(生みの親)と養親(育ての親)が特別養子縁組しましょうと合意するだけではできません。

成立に家庭裁判所の許可が必要です。

養親が家庭裁判所に申し立てをします。

家庭裁判所が実親・養親から聴き取り調査を行い、要件がそろっていると認定し、特別養子縁組が子どもの福祉によいと判断すれば、成立します。

 

夫婦でないと養親になれない

特別養子縁組は、法律婚している夫婦でないと申立てできません。

内縁関係や夫婦別姓のために婚姻関係にない場合は、婚姻届を出す必要があります。

独身の男性女性あるいは法律婚が認められていない同性同士のカップルは申し立てをすることができません。

 

養親には年齢制限がある

養親となる夫婦の年齢は25歳以上でなければなりません。ただし夫婦の一方が25歳以上である場合、もう一方は20歳以上ならOK

養親の年齢の上限は特別養子法では規定されていませんが、子どもと親の年齢差が45歳差程度までであることが望ましいとする児童相談所や民間団体が多いです。

養親の年齢についての考え方はこちらに詳しく書いています。

特別養子縁組は何歳までに決断すべき?子との年齢差はいくつまで?
特別養子縁組を希望する場合、何歳までに決断すべきか、40代でも可能なのかを考えました。

 

養子となる子どもにも年齢制限がある

2020年4月1日民法改正が施行され、特別養子縁組における養子となる者の年齢の上限を原則6歳未満から原則15歳未満に引き上げられました。

理由は特別養子縁組の利用を促進するためだそうです。

法務省:民法等の一部を改正する法律(特別養子関係)について

なお、この改正で申立てが二段階になり、実親が翻意できる(養子に出そうと思ったけどやめたと気持ちを変える)期間が短縮しています。

 

実親の同意が必要(一部例外あり)

特別養子縁組が成立するには実親の同意が必要です。

実親とは子供を産んだ母だけでなく、その母の妊娠に関与した相手男性も含みます。

ただし、その相手男性の所在が不明であるような場合には、男性の同意がなくても(生みの母の同意のみで)成立させることができます。

あるいは実親による虐待や悪意の遺棄その他子どもの利益を著しく害することがある場合は実親の同意がなくとも裁判官の判断で成立させる場合もあります。

 

実親が子どもを育てられない状況が必要

特別養子縁組は実親の同意が必要ですが同意があっただけでは成立しません。

実親が養育することが難しい、養育が不適当などの事情がある場合のみ認められます。

実親が育てられない理由はこちら。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2022/02/08/zituoya-zizyou/

例えば、実親が経済的社会的に恵まれた環境にあるにもかかわらず、子どもの障害を理由に養子に出したいという場合に認められなかったケースがこちらに紹介されています。

育てられない子供を引き取るNPO法人が感じている「ある変化」(石井 光太) @gendai_biz
特別養子縁組の現場では、障害児が増えてきているという。中絶するわけでも、育てるわけでもなく、産んだ後に特別養子に出されていくダウン症の子供たち。そんな現場で話を聞いてみることにした。

 

「試験養育期間」が必要

特別養子縁組が成立するためには試験養育期間(監護期間とも言います)が6ヶ月以上必要です。

子どもと同居後6ヶ月以上の養育状況を見て、親子の関係が成立しているかどうか裁判所が確認します。

 

子どもと実親との親族関係が終了する

特別養子縁組では、子どもと実親(生みの親)との親族関係を終了させて、養子にとっての法律上の親が養親(育ての親)だけになります。

実親とも関係が残る普通養子縁組と異なる点です。

以前に書いた普通養子縁組との違いについてはこちら。

【経験談】なぜ普通養子縁組ではなく特別養子縁組なの? この疑問をどう解消したか
特別養子縁組より、生みの親・育ての親の両方との法的関係が残る普通養子縁組の方がよいのではないかと考えをあらためた経験を書きました。

 

養親からは離縁できない(養子からはできる)

いったん特別養子縁組が成立すると養親からは離縁の申立てはできません。

子どもが犯罪者になっても養親からは離縁できないということですと面談で言われたことがあります。

養親による虐待・悪意の遺棄など子どもの利益を著しく害する場合には養子・実親または検察官の請求により離縁させることができます。

 

離縁が成立すると実親との親子関係は復活する

離縁が成立すると特別養子縁組で終了した実親及びその血族との親族関係が改めて生じます。

 

子どもを迎えるルートは2種類

特別養子縁組で子どもをどこから迎えるかは2種類の選択肢があります。

  • 公的機関である児童相談所
  • 民間あっせん機関

2つのルートの違いはこちらにまとめています。

特別養子縁組の子どもはどこから?児童相談所・民間2つのルートのメリット・デメリット
特別養子縁組で子どもを迎えたいとき、2つの選択肢があります。児童相談所からか、民間あっせん団体です。それぞれのメリット・デメリット、どちらを選ぶべきかのポイントをまとめました。

 

まとめ

  • 特別養子縁組は、子どもと生みの親との法的関係を解消させ、育ての親を唯一の法的な親とする制度
  • 家庭裁判所に申立てをして、審判を受け許容されないと特別養子縁組は成立しない
  • 法的な夫婦でないとできない
  • 養子となる子、養親ともに年齢制限がある
  • 養親からの離縁はできないが、養子からはできる

 

参考図書

 

特別養子縁組の基本用語はこちら

特別養子縁組に関する基本用語まとめ
特別養子縁組を前提に児童相談所から委託された子どもといっしょに暮らしている養子縁組里親の瑛子えびすこと申します。 「特別養子縁組」がメディアでも取り上げられる機会が増えてきました。 特別養子縁組に関す...

 

特別養子縁組で後悔しないためにはこちらhttps://tokubetsuyousiengumi.com/2021/08/06/koukai-fuan/

 

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