特別養子縁組で迎えた子どもと暮らす、瑛子えびすこと申します。
私が特別養子縁組を考え始めた頃、「どのような事情の子どもが養子の対象になるのだろう」と疑問を抱きました。
知れば知るほど、事情はさまざまで複雑にからみ合っているなと感じるようになりました。
- 厚生労働省が出しているデータ
- 児童相談所の面談
- 民間団体あっせん団体の説明会
- 特別養子縁組に関する書籍
などをもとに実親さんの事情を考えます。
実親は本当に未成年が多い?
子どもを養子に出すと聞くと、小説「朝が来る」やドラマ「コウノドリ」で描かれたようなケースが思い浮かぶ方が多いかもしれません。
中高生が妊娠し、中絶できる期間を過ぎてから、妊娠に気づくようなケースです。
厚生労働省の「令和元年度養子縁組民間あっせん機関実態調査結果」にデータがあります。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000759102.pdf
児童の父母(実父母)の年齢を見ると
未成年(15歳未満+15歳以上20歳未満)の割合は
実父で7%
実母で17.7%
最多は20代で
実父で12.6%
実母で41.7%
ただし不明が実父は68%、実母は23%と多く正確な数字ではないですが、予想外に「未成年」の割合は少ないと感じました。
厚生労働省の調査内容まとめはこちら。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2021/10/05/minkan-tjousa-gannendo/
実母さんが抱える病や障害
子どもを養子として託す、実母さんには軽度の知的障害・発達障害・精神疾患があることが珍しくないそうです。
予期せぬ妊娠をしたときに、的確な状況判断がしづらかったり、問題を先送りしたりするために、問題がより大きくなりやすいと言われます。
疾患や障害が軽度であるために診断がなされておらず、専門的援助を受けていないことが多いそうです。
詳しくはこちら。
「障害児の割合が高いとされる理由」の項
https://tokubetsuyousiengumi.com/2021/08/04/syougaizi-kakuritu/#toc6
犯罪がからむようなケースは一部
2018年に参加したbabyぽけっとの説明会で挙げられた、実親さんの事情は次のようなものでした。
- 未成年
- 精神疾患
- 性犯罪(レイプで妊娠)
- 実父の逮捕(オレオレ詐欺など)
- 性風俗
- 不倫
当時オレオレ詐欺が流行しており、実父が逮捕されたケースが数件あったと聞きました。
性犯罪には近親間(父親や兄からなど)の場合も含まれるとのこと。
棄児のケースも少数だがある
児童相談所の面談では、実母さんが孤立出産(病院以外の場所での出産)をして、生まれた子どもを遺棄するケースも多くはないがあると聞きました。
映画「夕陽のあと」では、追い詰められてネットカフェに赤ちゃんを置き去りにする実母さんが出てきます。
産婦人科や乳児院の前に置かれている赤ちゃんが発見される事件も。
つらい事実です。
でも誰かに見つけてほしくて人目に付く場所に置いてくれたことで命が助かったならよしとしなければならないのかもしれません。
書籍からの実母さんの事情
書籍でも実母さんの事情が触れられています。
はい。赤ちゃん相談室、田尻です。
こちらの本には、さまざまな実親さんの事情が書かれています。
「SOS電話」の相談者には、貧困や家庭崩壊など深刻な状況にある人が多く、それも若年層が目立ちます。(P90)
慈恵病院へ寄せられた「思いがけない妊娠」の内訳は、「未婚の妊娠」に次いで二番目に「若年妊娠」が多いのです。(P98)
2007~2014年度の相談者を職業の有無別に見ると、学生が26%、無職が36%で合計62%。学生のなかでも中学生95人、高校生657人、大学生638人。(P112)
「思いがけない妊娠」の内訳(2007~2014年度)
暴力・強姦 68
不倫 282
若年妊娠 323
未婚の妊娠 655
望まない妊娠 233
周囲(家族)の反対 138
夫・パートナーの反対 256
パートナーとの離別 229
生活困窮 134
その他 83
子どものための里親委託・養子縁組の支援
妊娠の経過や養子にして託そうとする事由や背景は、実にさまざまである。
具体的には、若年での妊娠(小学生・中学生・高校生・大学生など)、男性の身勝手や無責任(妊娠が分かった後連絡が途絶える。否定。中絶を強要。実際は、妻子がいた等々)、性被害など事件性のある妊娠、出会い系サイトや風俗の仕事による性交での妊娠(相手が不明)、性虐待、不倫、貧困等経済的な問題、多子、知的障害、精神疾患、婚姻外の妊娠等で世間体が悪い、費用がなく中絶可能時期を過ぎてしまった、特別養子縁組として託すことを経験しながらこれを繰り返す人、胎児異常や新生児の奇形を受け止められない、医師から障害をもつリスクがあるという説明を受けて悲観した等々と多岐にわたっている。P198
貧困・生活困窮・家庭崩壊などが背景にあり、若年・未婚で予期せぬ妊娠をして、相談する・頼る相手が無く、中絶するお金も無く、中絶可能な期間を過ぎて、出産せざるを得ない状態になる。
理由はひとつではないケースが多いと思われます。
意外と多い どこにでもいる普通の女性のケース
「特別養子縁組を親族に反対されている」という相談を受けたことがあります。
反対の理由をたずねると「養子に出されるような子ども、どんな家の子どもかわかったもんじゃない」と言われたとのこと。
私も養子を迎えることになったと知人に話したとき「子どものお母さんはまともな人なの?」と聞かれたことがあります。
やはり世間のイメージはそんなものでしょう。
深刻なケースについて書いてきましたが、意外にも実母さんはどこにでもいる普通の女性であることも多いのです。
普通の生活を送っていた女性が交際していた男性とのあいだの子どもを妊娠。
男性に妊娠を告げると、いったんは結婚すると約束したが中絶可能な時期を過ぎて男性が逃げてしまったり、実は男性は結婚していたことがわかったりする。
女性ひとりで育てるより両親がそろっている環境で育てられる方が子どもにとってよいと養子に出されるケースは比較的多いと聞きます。
特別養子縁組の対象になる子どもの背景にはこういう男性がいるケースも多いと聞く。
なぜ女性1人が背負わねばならないのか。男性は逃げ得が許されてしまうのか。
中絶するにしても産んで育てるにしても養子に出すにしても、2人で決めて共に責任を負うべき。
男性が担えないのは身体の負担だけ。 https://t.co/e3p5wkgNb4— 瑛子えびすこ (@eebisuko) October 3, 2019
ごく普通の女子高校生が彼氏との妊娠を機に強くたくましく変化していく様子が描かれた小説。里親制度、特別養子縁組、AIDも出てきます。実母さんの事情が垣間見えます。
子どもを託した実母さんの希少な手記
実母さんのリアルなお気持ちが知れる貴重な機会です。
あやべさんのnoteの紹介です。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2021/06/15/zitubo-kimoti/
soarのインタビュー記事です。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2022/03/30/soar-zitubo/
養親は事情を全て受け入れるべき?
児童相談所の面談では「受け入れられる事情の範囲はどこまでですか」と問われました。
民間団体では「どんな事情を抱えた子どもでも受け入れます」の誓約書へのサインを求められる場合があります。
詳しくはこちら。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2021/06/24/seibetu-eraberu/
子どもにその事情をどう伝えるか
私たち夫婦は「どんな事情の子どもでも受け入れます」と児童相談所に伝えていました。
しかし、きびしい事情をいずれ子どもに自分たちの口から伝えなければならないことがとても大きな心の負担でした。
子どもには自分の出自を知る権利があります。
まとめ
特別養子縁組の実親さんが子どもを育てられない事情はさまざま。
- 未成年が多いイメージだが割合は多くない
- 実母さんの疾患や障害
- 経済的困窮や家庭崩壊
- 暴力、不貞行為
- 普通の女性のケースも意外と多い
事情はどのようなものであっても、子どもの幸せを願い託す、実母さんの勇気ある英断。そのおかげで幸せに暮らす家族がここにいます。
とても感謝しています。
コメント
[…] 実親が育てられない理由はこちら。 https://tokubetsuyousiengumi.com/2022/02/08/zituoya-zizyou/ […]