特別養子縁組で育児休業をとりたい 育休開始日が要注意ポイント

特別養子縁組の育児休業

特別養子縁組で迎えた子どもを育てている養親の瑛子えびすこと申します。

特別養子縁組でも育児休業をとることができるようになりましたが、妊娠出産からの育児休業とは異なる点があります。

育児休業制度の概要と、特別養子縁組での育児休業の取得の際、何に注意をすべきかお伝えします。

育児休業の制度の概要

育児休業って何?

育児介護休業法により、1歳未満の子を養育する労働者は、使用者(職場)に申し出て「育児休業」を取ることができます(育会法5条)

「育児休業」とは、子を養子するための休業。
「休業」とは、雇用関係が続いたまま労働者の労務提供の義務が一定期間なくなること。

労働者は休業中の労働を免れるが、特別な約束がない限り使用者に賃金の支払い義務はなくなります。
(→使用者からの賃金はないが、雇用保険からの育児休業給付金は支給される)

特別養子縁組の試験養育期間も対象

「子」には養子も含まれます。
平成29年1月の法改正により、特別養子縁組の監護期間(試験養育期間)や養子縁組里親に委託されている子といった法律上の親子関係に準じる関係にある子も対象に追加されました。

ただし、養育里親に委託されている里子は残念ながら、対象に含まれません。

育児休業は労働者が行使できる権利

「うちの会社、育休制度ない」と言われる方がいますが、会社に制度があるかどうかや雇用主が認める・認めないの問題ではなく、本来は労働者が申し出るだけで行使できる権利ということです!

 

育児休業の対象

育児休業の対象、原則として「1歳に達するまで」の子を養育する男女労働者

 

特別養子縁組でも子どもが1歳に満たなければ、育児休業をとることができます。
特別養子縁組の場合、迎える子どもの月齢はさまざま。
0か月から取得しなくても期限は1歳までです。(保育園に入園できなかった場合の延長やパパママ育休プラスなど例外はあります)

育児休業は1年ではなく1歳までと決まっているからです。

児童相談所からの特別養子縁組では、手続きに非常に時間がかかります。委託が決まって正式委託=育休開始になるまで、2~3か月かかるのが普通です。
例えば打診時点で子どもが4か月の場合、スムーズに手続きが済み6か月で育児休業が開始できれば、1歳になるまで試験養育期間の半年がぎりぎり育休でまかなえる計算になります。

 

夫婦で育児休業取得が可能

平成22年の法改正から、夫婦が同時に育児休業を取れるように、また妻が専業主婦であっても夫が育児休業を取れるようになりました。
特別養子縁組での育休も同様です。

育児休業の期間

原則として「子が1歳に達するまで」
厳密に言うと、子が「1歳に達する」誕生日当日ではなく、前日まで。

出産した妻の場合、出産後8週間の産後休暇があるため、育児休業はそれが終わってからとなります。
夫は、子が出生した当日(予定日)から取得可能。

特別養子縁組の場合、育児休業開始日は、基本的には正式委託日です。しかし、職場が必要とする書類等の手続き上の問題で変わってきます。

育児休業の開始日はとてもややこしく、要注意。詳細は「育児休業開始日」の項で後述します。

 

育児休業の申し出

子が1歳までの育児休業は、原則として育児休業を開始しようとする日の1か月前の日までに申し出ることが必要です。

新生児の特別養子縁組では、委託の連絡が「もうすぐ生まれますよ」の場合と「生まれました」の場合があります

「もうすぐ生まれますよ」の連絡が生まれる1か月以上にあれば、原則通りに1か月前に申し出ることができます。
「もうすぐ生まれますよ」でも出産まで1か月を切っていたり、「生まれました」の連絡であったりすれば、原則通りにはいきません。

どのような時期に委託の打診があるかは、児童相談所によっても異なり、民間団体によっても異なります。

「実母(産みの親)の意志が変わるかもしれない」ことを前提に出産前に連絡がくる場合と出産後に再度意思確認をしてから連絡が来る場合があるからです。

児童相談所からの委託では、マッチング期間(交流期間といったり実習期間といったりもする)が長く設定されていることが多く、その後、正式委託(=育児休業開始)となるため、1か月前の申し出は可能な場合が多いです。

どこから子どもを迎えようと考えているかによって、職場への伝え方が変わりますね。
育児休業取得を希望すること、原則の1か月以上前に申し出ができない場合があることを職場にあらかじめ伝え、了承を得ておく必要があると思います。

 

育児休業期間の延長

次のいずれかの事情がある場合は、使用者に申し出て、育児休業を子が1歳6か月になるまで、さらに2歳まで延長することができます。

①保育所の入所を希望しているが入所できない場合
②1歳以降も子を養育する予定であった配偶者が次のいずれかに該当したとき
イ)死亡したとき
ロ)負傷、疾病等により子の養育が困難になったとき
ハ)離婚その他の事情により子と同居しなくなったとき
ニ)6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定または産後8週間を経過しないとき

①②いずれの場合も、子の1歳の誕生日の前日に、両親のどちらかが育児休業中である場合に限ります。

特別養子縁組の場合は②の可能性は低いですよね。
この状態となれば委託解除されるでしょうから。

保活激戦区なら、①の保育所に入所できない可能性は十分あると思います。
特別養子縁組で迎えた子どもだからといって、保育所入所に有利になることはありません。

「保育所」とは児童福祉法に規定する保育所のこと。
いわゆる無認可保育所は含まれません。

「①保育所の入所を希望しているが入所できない場合」は「市町村に対して保育の申し込みを行っており、市町村から保育が行われない通知がなされている場合」を言います。
→その通知(書面)がない場合は①に該当するとは言えません。

1歳6か月まで延長するときは子どもの誕生日の2週間前までに申し出る必要があります。2歳までの延長についても同様に通知が必要で、申し出なければなりません。

2歳まで育児休業をとれるイメージがひろまって、1歳を超えた子どもでも育児休業がとれると思われがちですが、誤解です。
たしかに1歳6か月まで、2歳までと延長はできますが、上記に「子の1歳の誕生日の前日に、両親のどちらかが育児休業中である場合」とあるように、延長できるのは1歳前から育児休業をとっていた場合に限ります。

 

パパ・ママ育休プラス

育児休業は原則1歳までですが「パパ・ママ育休プラス」として、夫婦がともに育児休業を取得する場合(夫婦が同時に取得する期間があってもよい)は1歳2か月まで育児休業を取得できます。

ただし、夫婦一人ずつが取得できる休業期間の上限は1年間です。

 

特別養子縁組の場合、育児休業を0か月からとれる場合は少なく、開始が遅く、短期間しか取得できないので、この制度はとても有効です。

例えば、6か月から育休が開始された場合、夫婦で取得すれば、1歳までではなく1歳2か月までとれます。
最大だと
「夫婦が同日から取得すれば、6か月から1歳か月まで」です。
夫婦で取得開始日が違うと、先に取った方は1歳まで、後から取った方は1歳2か月までとなります。

夫婦が同時期でもOK、入れ替わりでもOKなので
・夫が6か月から1歳2か月まで8か月間+妻は8か月から10か月まで2か月間
・夫が6か月から10か月の4か月間+妻が10か月から1歳2か月の4か月間

など、いろんなバリエーションでとることができます。

厚生労働省が出している「パパ・ママ育休プラス」のリーフレットが非常にわかりやすいので、検索してご確認ください。

 

育児休業の必要書類

育児休業取得のための一般的な書類として「育児休業申出書」が必要です。
申請手続きは原則として職場が行いますので、「育児休業申出書」をダウンロードして(検索すると出てきます)印刷し記入して職場に提出します。
他にも育児休業給付のためにハローワークに提出する書類が必要ですが、提出者は職場です。職場が用意してくれた書類に記入して返送するだけ。職場の指示に従えば問題ありません。

特別養子縁組で育児休業をとる場合、通常の育休続きに必要な書類に加え別の書類が必要となります。

委託証明書(里親委託通知書・措置通知書などいろんな名称がある)・特別養子縁組を成立させるための請求に係る事件係属証明書・住民票記載事項証明書など、職場によって異なります。

 

特別養子縁組の育休に必要な書類についてはこちらに詳しくまとめています。

特別養子縁組の育休手続き 必要書類
特別養子縁組の育児休業手続きに必要な書類についてまとめました。

 

育児休業の開始日

基本的には委託日が育児休業開始日ですが、例外があります。

育休開始日が職場が育児休業の手続きに必要な書類家庭裁判所への申し立て時期に影響されるからです。

必要書類が

・児童相談所や民間団体より発行される「委託証明書(里親委託通知書・措置通知書ともいう)」のみであれば委託日

・家庭裁判所から交付される「特別養子縁組を成立させるための請求に係る事件係属証明書」と役所から発行される「住民票記載事項証明書」であれば、家庭裁判所への申し立て日

が育児休業開始日となります。

家庭裁判所の書類は申し立て後に発行されるので、申し立ての時期が育休開始日に関わってくるわけです。

家庭裁判所への申し立ての時期は児童相談所によっても、民間団体よっても異なります。

児童相談所の場合

正式委託日が育児休業開始日です(その日が試験養育期間の開始日ともなります)。

正式委託日は同居開始日とは異なるので注意が必要です。

通常、委託を受けることが決まってから、1~3か月程度のマッチング期間を経て、子どもを家に迎えることになります。
実習期間には、対象の子どもがいる乳児院や里親さん宅に通います。
試験外泊(お試しで家に連れて帰る)もありますが、まだ正式な委託ではありません。
同居を開始したときはまだ子どもは乳児院や児童養護施設に措置されている状態です。同居開始から、多くの場合は数週間程度、様子を見て、里親宅に措置変更になります。
措置変更されてはじめて、正式委託になります。

職場から家庭裁判所申し立て後の書類が必要と言われた場合ですが、児童相談所からの委託だと、同居から3か月ほどして申し立てる場合、半年同居をして試験養育期間を終えてから申し立てる場合など様々です。

児童相談所からの委託の場合の手続きは都道府県によって異なります。
お住いの都道府県に確認をしてください。

 

民間団体の場合

家庭裁判所への申し立て日も団体によって異なっていました。

民間団体Aでは子どもを引き取った翌日に同居届を出し、家庭裁判所に申し立てをします。

民間団体Bでは、子どもを引き取ってから、1~2か月様子を見てから、申し立てをするので、その1~2か月は有休等で対応するか、親族にヘルプを頼むかして下さい、その間の対応ができないのであれば、登録の申し込みをしないでくださいと言われました。

職場に家裁への申し立て後の書類が必要だと言われることがあるかもしれませんが、「委託証明書」「里親委託通知書」「措置通知書」で代用可能な場合がありますので、ぜひ職場とご相談ください!(実際私がそうでした)

育児休業給付

育児休業給付は、原則として休業前賃金の67%(育児休業開始180日経過後は当分のあいだ50%)相当が支払われます。

育児休業中は、通常、給与から天引きされている社会保険料が免除になります。

賃金の67%が支給されますが、感覚としては元の80%くらいもらえているような感じです。

育児休業制度についての問い合わせ先

経験上、都道府県の労働基準局が最も確実だと思います。

私たちは当初管轄のハローワークや労働基準監督署に問い合わせました。が、特別養子縁組での育児休業はレアケースなので、明確な返答をいただくことができず、そこで紹介してもらった県の労働基準局に問い合せし直すことになりました。

問い合わせの内容によっては、労働基準局でも即答はしてもらえず、数時間後に折り返し電話があったこともありましたよ。

まとめ

・特別養子縁組の育児休業は、妊娠・出産からの場合と異なる点が多くある
・育児休業は原則子どもが1歳になるまで
・夫婦で取得する場合、1人につき最長1年が原則
・取得開始が遅く1年に満たない場合、夫婦が同日から取得するとともに1歳2か月まで
・開始の1か月前までに申し出る(1か月以上前に委託の連絡が来ない場合が多いと事前に告げておく)
・必要書類は職場によって異なり、その影響で育休開始日が変わることがあるが、申し立て前に準備できる書類で代用できることもある
・育児休業について困ったら、都道府県の労働基準局へ

 

参考資料

育児介護休業の実務と手続き 休業社員・労務担当者・管理職の必携ガイド
社会保険労務士 岡田良則 桑原彰子
2016年

特別養子縁組で夫婦で育児休業をとった私たちの経験談はこちら。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/09/30/watasino-ikukyuu/

 

特別養子縁組での育休までの流れ・準備はこちら。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/06/03/ikuykuu-junnbi/

コメント

  1. […] 特別養子縁組の育児休業についてはこちらから。 https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/09/24/ikuzikyuugyou/ […]

  2. […] Babyぽけっとでは「ご夫婦のどちらかが一定期間育児に専念できる環境のご夫婦(当会での該当は大半が新生児または月齢児などの乳児の為、子供が2歳くらいまではご夫婦のどちらかが育児に専念できる環境が必要となります)」としています。 平成29年から、特別養子縁組でも育児休暇が取れるようになっています。 育児休業についての詳細はこちらから。 https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/09/24/ikuzikyuugyou/ […]

  3. […] 特別養子縁組の育児休業についての詳細はこちら。 https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/09/24/ikuzikyuugyou/ […]

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