特別養子縁組の子どもはどこから?児童相談所・民間2つのルートのメリット・デメリット

児童相談所か民間か

特別養子縁組で迎えた子どもといっしょに暮らしています。瑛子えびすこと申します。

特別養子縁組で子どもを迎えるのに2つのルートがあります。
1つは児童相談所から、もう1つは民間あっせん団体からです。

児童相談所、民間あっせん団体から子どもを迎える場合、それぞれにメリット・デメリットがあります。
どちらを選ぶべきかは、何を優先するかによって異なります。

本当に極端な言い方をしてしまえば、「お金」を優先するなら児童相談所、「新生児」「スピード」を重視するなら民間団体といえるかもしれません。

児童相談所によって対応や方針はかなり大きく差があります。
必ずお住いの地域を管轄する児童相談所からの情報収集を行ってください。

児童相談所から迎えるメリット

児童相談所は都道府県や特別区が管轄する公的機関です。

公的機関ゆえの安心感がある

児童相談所は公的な機関なので、公平な立場で関わってもらえます。
特別養子縁組の手続きは非常に時間がかかり、ややこしいです。
細やかにフォローをしてくれる場合が多いです。
児童相談所の担当職員や里親支援専門相談員が毎月訪問してくれ、特別養子縁組制度に関わらず、子育て全般の相談にのってくれます。

 

手続き費用が無料+里親措置費(生活費)が支給

児童相談所からの特別養子縁組にかかる費用は無料です。
実習の交通費・手続きに必要な住民票等の書類の準備などの実費や研修費の一部が自己負担にはなりますが、基本的に手続き自体に費用はかかりません。
人的コストなどは税金でまかなわれていることになります。

養子縁組里親(あるいは養育里親)として認定を受け、登録をして、子ども委託されると、月々5万円程度の里親措置費(一般生活費)が支給されます。
子どもの医療にかかる費用も受診券という保険証に代わる書類が用意され、自己負担はゼロです。

里親措置費も受診券の利用も子どもの入籍手続きが完了するまでとなります。

 

対象となる子どもの年齢層が広い

特別養子縁組の対象になる子どもは年齢が6歳以下(同居していた場合は8歳以下)と決められていましたが、改正民法により15歳以下に引き上げられました。

児童相談所からの委託される子どもたちのほとんど乳児院や児童養護施設などの施設、養育里親さん宅で暮らしています。

児童相談所によっては、子どもの病気や障害がある程度わかる2歳くらいまでは養子の対象にはせず、施設等で様子をみる方針のところもあります。

民間団体では新生児の割合が高い傾向にあります。
病気や障害の有無が確認できる少し年齢の高い子どもを希望される場合、または迎える親の年齢が高く新生児とのマッチングが難しい場合などは幅広い年齢の子どもを対象にしている児童相談所から迎えることが適しています。

 

対象となる子どもの条件(性別・年齢・国籍等)が希望できる

児童相談所から子どもを迎える場合、子どもの性別・年齢・国籍等の希望を申し出ることができます。
当然のことですが、希望条件が多いほど、委託の可能性は低くなります。
希望の優先度や強さによってもです。
例えば、絶対に女児がいいのか、できれば女児がいいのかで、委託の可能性が変わります。
できれば女児がいいと希望していたが、男児の委託を打診され、男児を迎えたケースなどは何件か聞いたことがあります。

 

児童相談所から迎えるデメリット

児童相談所は住んでいる地域によって管轄が決まっているので、隣の児相は対応がよさそうだと思っても他の児相を選ぶことができません。
児相を変えるには管轄外に引っ越すしか方法はありません。

 

児童相談所によって方針の差が大きい

児童相談所の方針や対応は児童相談所ごとにかなり異なります。
方針とは、養子縁組里親の共働きをよしとするか、保育園・幼稚園の利用を積極的に認めてくれるかなどに関してです。

そもそも約3分の1の児童相談所が特別養子縁組前提の委託を全く行っていないというデータがあります。

お住いの地域を管轄する児童相談所がその3分の1に入るような場合、もしくは数年に1件程度の委託しかないような場合、登録をして何年待機していても、委託がないことも十分に考えられます。
必ず、管轄の児童相談所に、特別養子縁組の年間の委託数養子縁組里親の待機年数待機数を早めに確認することをお勧めします。

同一の都道府県内でも管轄する児童相談所によって委託数が全く異なるケースがあるようです。

都道府県レベルの数字ではなく、あくまで管轄の児童相談所の数字を確認してくださいね。

 

待機になっても委託される可能性が低い

平成29年度末に登録した養子縁組里親3781組のうち、委託されたのは299組。
毎年、子どもが委託されているのは待機している夫婦の10分の1にも満たないのです。

経済的負担が圧倒的に少ない児童相談所からの委託は魅力的ですが、実際には待機になっても何年も委託がなく、民間に切り替える方もいます。

 

手続きが慎重で時間がかかる

この点も児童相談所によって、ずいぶん差があり、一概には言えませんが、民間団体と比較し手続きに時間がかかります。

民間団体と比べると、正式に委託されるまでのスピードが全く違います。
例えば、児童相談所からの委託の場合、子どもと関係作りをするためのマッチング期間(研修期間、実習期間などとも言います)が設定されます。
乳児院や児童養護施設、里親宅に通い、お世話の方法を学び、一緒に過ごす時間を延ばしながらお互いに慣れていきます。
その期間が1~3か月程度。
子どもの状態や施設の状況(例えば感染症が流行って実習ができない)により、もっと長くかかる場合があります。
ただし、これらの流れは決して全国一律ではなく、マッチング期間をほぼ設けずに、委託になる児童相談所もなかにはあると聞きます。

民間団体の場合、新生児委託が大半なので、2泊3日の教育入院や保育施設での実習で委託になることが多く、スピードが速いです。

児相の対応を遅いともどかしく思うか、慎重で好ましいと感じるかの違いが個人によってありますね。

 

実母と住まいか近距離の可能性がある

児童相談所の場合、同一の管轄内での委託が基本。
同一エリアの実親から出された子どもを同じエリア内に住む養親が迎えることになります。

私はこの事実を知ったときに、不安になりました。
将来、子どもが実母さんに会いたいと思えば電車で数駅で会いに行けてしまいますし、実母さんがのちに出産されれば、近隣に血のつながった弟妹が生まれる可能性もあります。

このような状況におかれると、だから、特別養子縁組では近親婚を防ぐために、戸籍をたどって実親を探すことができるようになっているのだと納得しました。

 

新生児の委託が超レア(ただし地域による)

この点も非常に地域差が大きいです。
先ほど児童相談所は手続きが慎重だと書きましたが、子どもが新生児の時点では病気や障害の有無などがわからないため、それがおよそ確認できる2~3歳になるまでは施設入所を選択する児童相談所もあると聞きます。

 

実母との交流は不可

原則、児童相談所からの特別養子縁組では、実母さんとの交流はできません。
特別養子縁組の子どもの戸籍は実親と別のものになりますが、戸籍をたどって探すことはできるようです。
子どもが成人して、自分のルーツを知りたいと思えば、探し出して実母と会うことが叶う場合もあると聞きます。

 

民間団体から迎えるメリット

民間あっせん団体は方針など、独自の特色を持っています。

自分に合った団体を選べる

養親同士のつながりが深い、共働きを認めている、団体を通して実母さんとの交流ができるなど、団体によって方針が異なります。
自分たちが希望する方針によって、団体を選ぶことができます。
児童相談所と違い、民間団体は全国的に活動をされているので、遠方の団体を選択することも可能です。

 

登録・待機になった場合の委託率が高い(団体による)

「審査に合格し待機になったからと言って、必ず委託されるわけではありません」
どこの団体でもこのことばを言われます。
しかし、積極的に妊婦さんの支援を行っている団体では、養親候補が不足している場合もあり、合格してすぐにその場で委託の話をいただくようなケースもあると聞きました。

少なくても児相相談所のように、何年待っても委託がないというような状況にはなることは少ないと思われます。

 

新生児の委託が主

ほとんどの団体が、新生児委託を中心に行っています。
新生児委託のメリットは、親子の愛着関係を早期から作っていけることが挙げられます。

 

実母との交流が可能な団体もある

お互いが望めば、団体を通して、実母さんと交流する機会を持てる団体もあります。
子どもの誕生日に実母さんからプレゼントが届いたり、子どもの写真アルバムを実母さんに贈ったりするような交流をしている団体もあります。
団体のイベントに子ども、養父母、実母さんが参加し、毎年1回は会っていますというような映像を見たことがあります。

 

実母の居住地との距離が離れている

全国展開で活動をしている団体がほとんどなので、あえて子どもの出生地から遠方の養親候補を選ぶ団体もあります。
団体によって車で2時間以上離れているとか、関東圏の子どもには関西圏の養親というように違うエリアに委託するなどの対応をされています。
新生児が飛行機に乗って養親候補の元にやってきたり、逆に養親候補が飛行機に乗って迎えに行き飛行機で連れ帰るようなことが普通に行われています。

 

特別養子縁組成立後も長期間のフォローが受けられる

児相の場合、特別養子縁組が成立したあとはほぼフォローはありません。

私たちの場合、成立して半年後の訪問が最後で、その後は養親側から何らかのアプローチをしないと児相と関わることがありません。

民間団体は団体にもよりますが、特別養子縁組成立後も長期間のフォローがあります。

ベアホープでは養子が16歳になるまでフォローするそう。

やめなければ同じスタッフさんに長期間担当してもらえるのはうらやましいです。

児相から迎えた私たちは、児相の里親担当、実母担当ともに数年で変わってしまい、実母さんや委託時の状況を知る人は誰もいなくなってしまったからです。

 

民間団体から迎えるデメリット

民間団体も方針がさまざまなので一概には言えません。

費用が高額(数十万の実費から数百万まで幅がある)

ここを非常に高い障壁に感じる方が多いと思います。

民間団体から子どもを迎えると費用がかかります。
ケースごとにかかった費用を請求する団体と手数料を一律に定めている団体とがあります。

費用が高額な理由、団体によって差がある理由をこちらに書いています。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/05/31/minnkann-kougakuhiyou/

民間団体の費用比較はこちら。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/07/26/minnkann-hiyou-hikaku/

民間団体から子どもを迎えた場合の補助金についてはこちら。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/07/03/minnkann-joseizigyou/

 

性別・障害の有無、国籍などが選べない(団体による)

民間団体によりますが、性別は希望できるが障害の有無は選べないなどの方針があります。
ほとんどの民間団体では待機になった時点で「どのような子どもでも必ず受け入れます」という誓約書の提出を求められます。

私の知り合いの養親さんはある民間団体の審査に通ったのに、この誓約書へのサインがどうしてもできずに辞退したと言われていました。
産まれてきて初めて子どもの病気や障害の存在がわかれば受け入れられるが、産まれる前から重大な病気や障害がわかっている場合に委託の打診を断る権利がないというのはつらいと話されました。
ここは非常に悩ましいところですね。

 

年齢制限が厳しい(団体による)

法的には養親の年齢制限はなくなったと言われますが、実際には民間団体によって、養親候補の年齢制限はあります。
経済的・体力的な視点で、子どもとの年齢差が開きすぎないように決められています。

妻が何歳・夫が何歳までというような制限がある団体や、夫婦の年齢が高い方が何歳までと決めている団体もあります。
待機になっていても、制限年齢に達すると、待機を解除される団体もあるようです。

ストークサポートのように養親の年齢制限なしとしている団体もあります。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/05/25/stork-support/

児童相談所であれば年齢によって、里親登録が解除されることはおそらくないと思います。(数年ごとの更新手続きが必要)

しかし、里親登録が維持できるからといって、子どもが委託されるかどうかは全くの別問題です。

 

申し立て手続き等のフォローが乏しい場合がある

児童相談所からの委託の場合、児童相談所の職員や里親支援専門相談員が訪問して、支援をしてくれます。
民間団体の場合は、同居から申し立てをするところまではフォローしてくれることが多いようですが、その後のフォローが乏しい場合があると聞きます。

聞いた話ですが、ある民間団体から子どもを迎えた養親さんの試験養育期間が終わり、家庭裁判所での特別養子縁組の手続きに入りました。しかし実親さんと連絡が全く取れなかったそうです。(手続きでは家庭裁判所から呼び出されたり、書類を受けとったりと実親さんにも動いていただく必要があります)
すると、団体は動けないので弁護士を立てるように言われ、養親さんは従ったそうです。どのくらいの割合でこのようなことが起きるのかわかりませんが、精神的負担・弁護士費用も含め、養親の負担は大きいと思います。
児童相談所からの委託であれば、児童相談所の職員が動いてくれるので、養親自らが動くことは少ないのではないかと思われます。

 

児童相談所、民間団体、どちらがいい?

上記のメリット・デメリットを考慮して、ご夫婦で譲れない条件を考えてみるとよいと思います。

例えば、
・不妊治療でお金を使ったから、経済的負担がない児童相談所からじゃないと無理
・絶対に新生児がいいから民間一本で行こう
・子どもには実母さんと交流してほしいから、そういった方針の民間団体を選びたい

といった具合です。

年齢的に時間がない!!のであれば、児童相談所と併願可能な複数の団体の両方に申しすることをオススメします。

もし、お若くて時間的猶予が十分にあり、新生児にこだわらないのであれば、当面、児童相談所にしぼってチャンスを待つのもありかもしれません。

ただし、管轄の児童相談所の特別養子縁組前提の委託率の確認を必ずおこなってくださいね。

対応や方針は児童相談所によってかなり大きく差があります。
必ずお住いの地域を管轄する児童相談所からの情報収集を行ってください。
児相と民間の費用を比較した記事です。参考にどうぞ。
特別養子縁組の入門書として最適です。
養親当事者の方が書かれたガイドもあります。

コメント

  1. […] 児童相談所と民間団体のそれぞれのメリット・デメリットはこちら。 https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/11/06/zidousoudannjo-minnkann/ […]

  2. […] […]

  3. […] 児相と民間のメリット・デメリットをまとめています。よろしければこちらも参考に。 https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/11/06/zidousoudannjo-minnkann/ […]

  4. […] 児童相談所と民間の比較はこちら https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/11/06/zidousoudannjo-minnkann/ […]

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  6. […] 児童相談所からの委託であれば費用負担はないですが、里親登録をしても何年も待機している方が多く、民間に切り替える方もいます。 https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/11/06/zidousoudannjo-minnkann/ […]

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