特別養子縁組で後悔しないために 解消しておきたい8つの不安

特別養子縁組の基礎知識

特別養子縁組で迎えた子どもと暮らす養親の瑛子えびすこです。

特別養子縁組で子どもを迎えることは人生の一大決心です。

私もそうでした。

子育てが未経験である上に、血のつながらない子どもという二重の不安。
周囲を見渡しても経験者はおらず、ネットの情報も少ない。
不妊治療の心の傷が癒えないまま年齢制限に焦って動き始めたけど。

果たしてこのままこの道を進んでいいのだろうか。

ふり返ると、何度も立ち止まって悩み、不安とたたかい続けた道でした。

特別養子縁組で後悔しないために、想定される不安とその解消方法について、私たちの経験もまじえてひとつずつ考えていきます。

 

特別養子縁組は子どもの福祉のための制度

特別養子縁組は子どもが欲しい大人のための制度ではありません、子どもの福祉(利益・幸せ)のための制度です。

どんな紹介文を読んでも書かれているこの一節。

言いたいことはわかるけど…モヤモヤする。

私たちが育てたいからではダメなの?」

大丈夫です、ここでひっかかっても。
この疑問は特別養子縁組で子どもを迎えたいと動き出したときに誰もがぶち当たる第一関門ですから。

子どもがほしい、子どもを育てたい、これは私たちのエゴだろうか?
子どもの幸せってどういうこと?どんな生活?
そもそも私たちは何で子どもを育てたいんだっけ?

あらためてよく考え、夫婦で話し合うチャンス。

「どうして特別養子縁組をしようと思ったのですか?」
児童相談所でも民間団体でも面談で必ず聞かれる質問です。

「不妊治療で子どもを授からなかったので、養子はその代わりです」
「僕は長男なので後継ぎがないと家系が途絶えてしまうからです」

これらの答えでは絶対に審査には合格しません。

質問への最適解は私もいまだにわかりません。
考え方として誰を中心においているかが重要で、大人ではなく子どもを主軸にした答えが求められているのではないかと思います。

 

血の繋がらない子どもを愛せるか

血のつながらない子どもを愛せるか、この不安を感じる方も多いと思います。

養子を育てた経験は数年の私が言っても説得力はないかもしれませんが、この点については全く問題ありません。
子どもを目の前にしたら、勝手に心と体が動き出します。
養子であることを意識することはありません。

子どもと出会った瞬間に、血のつながらない子を愛せるだろうかの迷いが消えた
これは養親さんのほとんどが口をそろえて言います。

子どもとの関係がうまくいかないときに、「養子だからかわいくないんだ」と思ったり、「血がつながらない」ことを理由にすることだけはしないようにしようと心に決めています。

 

子どもに病気や障害があっても育てる覚悟

私たちの経験をまじえて、子どもの障害がある可能性とどう向き合うか、こちらに書いています。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2021/08/04/syougaizi-ooi/

自分たちで引き受けた子どもが病気になったり、障害を負ったりした場合に育てていく覚悟は必要ですが、児童相談所からの委託では事前に子どもの希望の条件を出すことができます。

 

実子と違う養子の子育て

養子を育ててきた経験では子育てが始まると「夜寝てくれない」「お風呂を嫌がる」など実子と変わらないことが悩みの中心になります。

養子を育てて1年半をふり返って書いたものがあります。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/09/26/yousi-kosodate/

市役所・保健所・病院など公的な機関では養子であることを告げないわけにはいきませんが、子育て支援センター・ご近所さんなど必ずしも告げなくてもいい関係性で、どの範囲まで打ち明けるか悩ましさは今でも同様ですね。

それ以外に養子の子育てて実子と大きく異なる点が次の3つです。

 

真実告知

真実告知とは、子どもに育てる親と血がつながらないことを伝えること

物心がつく前に子どもを迎えた場合は必須です。
いつどう伝えるか、明確にルール化されてはおらず、民間団体ごとに取り決めが違うようです。(私の知る限りでは真実告知を不要としている団体はありません)

ことばが理解できないうちから話して聞かせましょう(伝える親の側の心理的抵抗が少なくなる)、あらたまって伝えるよりも日々の生活のなかで子どもからの問いに答える形で伝えるといいでしょうなど、子どもの成長や正確に合わせて行うことが推奨されています。

 

試し行動

試し行動とは、子どもが養親を困らせるような行動をとること。(養親が自分をどの程度受け止めてくれるか、本当に愛してくれる人か探るため)

乳幼児であれば、過食・拒食・偏食・暴言を吐く・叩いたり蹴ったりするなど、行動はさまざま。

迎えられた年齢(月齢)がいくつであっても試し行動はあると言われています。

知り合いの養親さんは生後8か月で迎えたお子さんが乳児院では離乳食をよく食べていたのに、家に連れ帰った途端に全く食べなくなってしまったそう。
知識として持っていたので「来た来た!試し行動だ!」と思って、冷静に対応ができたと言われていました。

試し行動について詳しくはこちら。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2022/03/14/tamesikoudou/

児童相談所からは、試し行動には必ず終わりがあるからそれまでは我慢、全て受け入れてくださいと言われます。
忍耐力が問われますね。

 

思春期

もうひとつ養子の子育ての大きなハードルとなるのが思春期です。

実子であっても子育てが難しくなる時期、「養子であること」が自分のアイデンティティーに影響し、親子関係がより難しくなることが多いようです。

思春期になったからどうにかしようとしても難しいので、幼少期からの安定した親子関係を築いていくことが大切。
そのためには幼少期での真実告知が重要で、大きくなってから真実告知を受けた(または偶発的に知ってしまった)場合、親に裏切られたという心理になりやすいのだそうです。

養親にむかって「ホントの親でもないくせに!」は養子あるあるだそうです。

「ホントの親でも」を子どもが言えることはきちんと親子関係ができていることを意味するので、養親としては喜ばないといけない場面だと聞きました。

養子の子育ての特異性や難しさについて書きましたが、養子の子育てだからこそのポジティブな側面もたくさんあります。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2021/02/02/yousi-positive/

 

配偶者や両親の反対

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で紹介されていた特別養子縁組をで子どもを迎えるために乗りこえるべき4つの壁。

1つが夫婦の足並みがそろわないという壁、1つが親族の反対という壁です。詳しくはこちら。

特別養子縁組で子どもを迎えるためにのりこえておくべき壁
特別養子縁組を考える上で乗り越えるべき壁が4つあります。高齢・夫婦の足並みがそろわない・親族の反対・共働きです。

配偶者とは意見をたたかわせてでも、夫婦の共通の認識をもち、同じ方向にむかって進むべきだと思います。
特別養子縁組は夫婦単位で行うものなので。

しかし、親族の反対については、個人的には必ずしも同意がなくてもいいのではないくらいに思っています。
親族に反対されてやめるくらいの気持ちなら、子どもを迎えてから遭遇するいろんな障壁を突破できないと思うからです。

 

実親の気持ちが変わったら子どもを返す

実親の翻意(ほんい=いったんした決意を変えること)により、半年以上育てた子どもを返さなければならなくなった養親のケースが2020年新聞で取り上げられました。

息子を育てた259日 「大好きだよ」告げ実母へ渡した:朝日新聞デジタル
 生後12日で「息子」になった赤ちゃんを、夫妻は毎日写真に撮り続けた。259日目に別れは訪れた。 特別養子縁組を前提に生まれたばかりの赤ちゃんを引き取りながら、実母の翻意で不成立になった夫妻がいる。男…

すごく悲しいニュースで、別れを想像するとたまらない気持ちになりました。

現在は、民法が改正され、出産後2か月以降に裁判所で実親さんの同意が確認された後、2週間経つと翻意できなくなりました

ただし、裁判所が同意の確認をする時期が決まっていないので、いつから2週間が始まるかがケースバイケースのようです。

改正前の私たちの場合は、同居開始から審判が下りるまでちょうど1年かかり、このあいだ、ずっと翻意の不安が続きました。

家庭裁判所の申し立ての流れで、実親さんが裁判所に出向いて、調査を受け、特別養子縁組の同意のサインをする手続きがあります。
子どもに両親がいる場合は、父親と母親と双方の同意が必要。
母親は同意しているが、父親の同意が得られない、または所在がわからなくなって同意がとれないケースもあるそうです。

翻意できる期間が短くなったことは養親にとっては朗報ですが、実親さんにとってはそうとは言えない可能性はあると思います。

児童相談所で聞いたところによると、実親さんが翻意する確率は全体で1%程度。

私たちの管轄の児童相談所では比較的、特別養子縁組前提の委託が多いのですが、今まで翻意のケースはないそうです。

 

高額な民間団体の費用

お金の問題も不安を感じる部分だと思います。
特別養子縁組にかかるお金は児童相談所と民間団体では大きく異なります。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/05/31/okane-zisou-minnkann/

児童相談所からの委託であれば費用負担はないですが、里親登録をしても何年も待機している方が多く、民間に切り替える方もいます。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/11/06/zidousoudannjo-minnkann/

なぜ、民間団体の費用が高額なのかはこちらを参照ください。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/05/31/minnkann-kougakuhiyou/

 

ベビーライフの廃業の問題がマスコミで取り上げられたとき、費用が高額なあまり叩かれました。

ベビーライフの場合、あっせん前の子どもをあずかる保育施設をもっており、あっせん後も養親へのサポートがあり、実親さんとのやりとりの仲介もしてくれていたようです。
ベビーライフは民間団体のなかでも費用は高い方でしたが、それだけのサポートがあるなら妥当な金額だったのかもしれません。

ベビーライフから子どもを迎えた養親さんたちは、様々なサポートを受けられる対価として費用を納得して支払っていると思います。
ですから、ベビーライフが廃業せずに、事業を継続できていれば、養親さんたちにとっては何の問題もなかったはずです。(それを代表に裏切られたのでショックも大きかったと思われます)

高額の費用ですので、よく調べて自分たちで足を運び、自分たちの考え方に合い、負担する費用に見合った民間団体を選ぶことが大事だと思います。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2020/04/09/minnkann-erabikata/

 

不妊治療での喪失感

特別養子縁組を希望する夫婦のほとんどは不妊治療経験者です。

  • 大好きで結婚した人の子どもを授かることができなかった
  • なぜいったんは命を授かったのに出産まで辿り着けなかったんだろう
  • 今までの人生では努力は必ず報われると信じていたんだけどな

それぞれが不妊による心の傷や喪失感を抱えています。

「治療は卒業、じゃあ養子縁組で」と気持ちの切り替えはそう簡単にはいきません。
不妊治療にまだ心残りがあり、治療と並行して、特別養子縁組を考え始める方も多いです。

不妊の心の傷はどう変化していくのか。

私の場合は、特別養子縁組に向かって手続きを進めるうちに、徐々に妊婦さんに視線をむけることが苦痛でなくなっていきました。

これは子どもを迎えるために動いていたからなのか、ただ時間的な経過によるものなのか、よくわかりません。

子どもを迎え、子育てが始まると日々夢中で、ただただ子どもがかわいくて、不妊の傷を思い出さない時間は確かに長くなりました。

でも不妊の傷がすっかり消えたわけではありません

ふとしたときによみがえります。

例えば、知人が予定外の妊娠をして産もうかどうか迷っていると知ったとき。
気づいたら、娘と同年齢の子どもを持つ友人が当たり前のように2人目を妊娠していたとき。
やはり、感じるところはあって、少し落ち込みます。

心の傷は治療をしていたときのようなジュクジュクした状態では無くなりました。
普段は乾いていて痛みを感じることは無いですが、何かの拍子にかさぶたが剥がれて出血し、痛みだすことがあります。

子どもとの生活がいくら幸せであってもです

そもそも、不妊治療の喪失感を子育てで埋めるという考え方が間違っていると感じるようになりました。

心の傷は自分自身が付き合っていくべきもので、本来子どもとは関係ありませんよね。

 

不妊治療を終えたらすぐに少しでも早く手続きをしなければ!

養親にも年齢制限があるんだから!

養親も若い方がチャンスは大きいから!

焦ってしまうのは私もそうでしたので、わかります。
しかし、傷がジュクジュクしているあいだは、少し心を休めることも必要なのかもしれないと思います。

不妊治療と特別養子縁組についてはこちらにも書いています。
https://tokubetsuyousiengumi.com/2019/10/17/nannsaimade/

 

最後に『養親は弱音を吐きづらいからこそ』

養親として適性があるか、審査を受ける段階で「子どもを育てる覚悟はあるのか」をくり返し問われます。

そのために、気負いすぎてしまって、弱音を吐けなかったり、周りに助けを求めることができなかったりする養親が多いと聞きます。

知り合いの養親さんも「自分がやらなければ!と思い込んでいてがんばりすぎた。自分の親にさえ助けてもらおうと思えなかった。親は助けたいと思ってくれていたのにそれに気づかなかった」と委託当時をふり返って話されました。

子育ては夫婦が基本。

そこに加えて気軽に相談できる相手、頼れる相手を複数見つけておくことが大事かなと思います。

児童相談所や民間団体の職員さん、里親専門支援員さん、ただそれらの方々には弱みを見せたくない人もいるでしょうから、里親会、養親仲間、友人など。

SNS上のつながりもよいですよ。

私はtwitterをやっています。
twitterはこちらから

会ったことはない人たちばかりでも、同じ養親の立場の方とつながっていると、とても心強いですし、弱音や愚痴も受け止めてもらえたり、共感してもらえたりします。

 

まとめ

特別養子縁組で後悔しないために、検討している方が感じるであろう不安についてまとめました。

不安はたくさんありますが、大丈夫。
子どもを迎えて今幸せに暮らしている養親たちもみな同じ道を通ってきています

周りは「わざわざ苦労するような道を行くことない」「養子を育てるなんて大変なこと、あなたにはできっこない」と勝手なことを言います。(私もたくさん言われました)

悩み落ち込んだとき、いちばん支えになってくれたのは、ネットを通じて知り合った、先輩の養親さん方でした。
経験してきた方の話がいちばん心に沁みました。

周囲の雑音は

養子を育てた経験のない方に!
わかるはずない!

そう思っておけばよいのです。

 

偶然出会って親子になった、それが運命だったんだと思って、子どもを育てています。

一組でも多くのご夫婦が子どもと出会って幸せになれますように。少しでも背中を押せたらうれしく思います。

 

特別養子縁組を考え始めた方におすすめの一冊です。

コメント

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